2017 3歳戦備忘録(18)+α「遺伝のしくみ」考察その2

2017年05月02日

「遺伝のしくみ」考察その1

 この週中はレースにまつわるものでなく、競走馬の血統というものをより深く追求する為に参考にしておきたい事柄をテーマに、記事を綴ろうと思います。

 競走馬の血統を語り、考察をしていく上で、特に「遺伝」というものにまつわる、ある程度の基礎知識・基本認識を読者の皆様と共有していきたいとの思いから、しばらくお付き合い願えればと存じます。

 尚、今回の記事UPに伴い、専用の記事カテゴリ「遺伝のしくみシリーズ」をあらたに新設することにします。

 さて、去る3月21日付の記事において、種牡馬クロスと牝馬クロスの影響度の「差異」について、遺伝学的な見地から考慮しておくべき牡・牝それぞれの遺伝の仕方について述べました。

 そこでは、用語としての「遺伝子」と「染色体」について私自身の認識不足があり、「X遺伝子」「Y遺伝子」などという表現をしていましたが、正確には、遺伝子というものは1つの染色体の中に数百から数千もの遺伝情報を備えたものとして存在している、と捉えるべきのようです。

 なのでその記事内容を訂正することにし、それぞれ「X遺伝子」を「X染色体」、「Y遺伝子」を「Y染色体」

 として既に記述し直しております。

 本日はそれを踏まえまして、私の手元にある科学雑誌「Newton」の2009年11月号(株式会社ニュートンプレス発行)で特集された記事「遺伝のしくみ」を参考文献として、著作権に抵触しない範囲で記事内容を抜粋・引用します。

 内容は当然、「ヒト」についてのもので、「ウマ」についてではありません。ですが基本的なしくみは哺乳類全般にほぼ共通するはずですので、まずは一般論としての「ヒト」で見ていくものとします。

 以下から抜粋文です。(原文ままではなく、一部に省略等あり)

「親から子へと受けつがれる『染色体』〜親子や兄弟姉妹は50%だけ一致〜

 ヒトの体はおよそ60兆個の細胞からなり、その一つ一つの細胞は46本の『染色体』を持っている。この染色体こそ、遺伝情報を親から子へと伝える実体である。

 ヒトの体を作る60兆個の細胞は、元を辿ればたった1個の「受精卵」から出発したものだ。受精卵は、父親の精子と母親の卵子が合体して1つになった細胞である。

 精子や卵子は、染色体の数が半分に減る特殊な細胞分裂によってできる。そのため精子や卵子の染色体は46本の半分、23本しかない。これらが受精することで染色体は46本に戻る。(中略)従って、子の染色体は父親・母親のそれぞれと50%が一致する。

 (中略)一方、通常の兄弟姉妹や二卵性双生児では、染色体は平均して50%が一致する。その理由は精子や卵子を作る時の染色体が半減する過程にある。

 例えば精子ができる時、父親が持つ46本の染色体のうち、(生まれてくる子から見た)祖父由来の染色体と祖母由来の染色体が “つぎはぎ” され、23本の染色体に再編される。

 このため、この父親から生まれた兄弟姉妹の染色体を比較すると、祖父由来か祖母由来かが、部分ごとに一致したりしなかったりする。これを平均すると、染色体全体の50%が一致する計算になるのだ。

 これが、兄弟姉妹がほどほどにしか似ていないことの理由である」


 以上で、抜粋文は一旦終わりです。

 人間社会における、通常の兄弟姉妹とは、競走馬の世界においては全きょうだい(全兄弟、全姉弟、全兄妹、全姉妹)として置き換えられることになるワケですが、要するにディープインパクトとその全兄ブラックタイドは、血統表で示される先祖たちは全く同一であっても、2頭がそれぞれ持つ染色体もおそらく人間と同様、ほぼ50%程度の割合で異なっている、と受け止めて良さそうです。

 無論、「ウマ」の染色体の総数は「ヒト」と異なり、64本と多いので、当然そこには複雑多岐な生物学的差異によるものが含まれるのでしょうが、染色体自体の親子間の差・全きょうだい間の差そのものは、人間の場合とほぼ同じであると考えても不都合はないでしょう。

 キタサンブラックを産んだ母シュガーハートが、今度はディープインパクトともしも配合されるような場合には、果たしてどのような産駒がこの世に登場してくるのか、非常に興味深いものがありますね。

 まあ実現するかどうかはかなり難しいものがあるでしょうが、これだけレース賞金をガッポリ稼いだんですから、北島オーナーもディープの種付け料ぐらいの出費はどうってことないはずです。

 1頭の持ち馬の活躍で夢を終わらせるのではなく、様々な配合事例を試せる立場にある馬主の方々には、もっと日本の競馬界の「未来」を見据えて欲しいですね。

 それはシュヴァルグランなどを所有する佐々木氏にも言いたいことで、常に同じ繁殖牝馬の仔ばかり所有して「儲け」に徹するのではなく、その資金を「未知の、それまでとは異なる配合」を持つような産駒に投資して、もっと冒険してもらいたいものです。ただでさえ、大リーグからの潤沢な年金が毎年約束されているほどのお立場なんですからね・・・。

 結果として、その未知なる配合の馬で成功を収めることになれば、それが今度は日本の競馬界の発展にも、必ずつながることになるはずですので。

 などと最後はちょっと脱線してしまいましたが(笑)、この記事の続きは「その2」にて。


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