2019年08月
2019年08月14日
今宵はジャズの話など(3) クリスチャン・マクブライド編
今回で3回目となるが、競馬以外のワタクシの趣味の一つであるジャズにまつわる記事を。
今回取り上げるジャズマンは現代の米国ジャズシーンにおいて不動の地位を確立している、ベーシストのクリスチャン・マクブライド氏である。
このシリーズ記事では、本来なら第1回目にジャズピアニストの大西順子氏を取り上げ、その次にこのマクブライド氏の記事を続けるつもりであった。
しかし第1回目の記事で述べた通り、昨年11月に49歳の若さで逝去したジャズトランペッターのロイ・ハーグローヴ氏を急遽取り上げることにしたために、マクブライド氏の紹介は今回となった次第。
私が20代半ば当時に、ジャズに興味を持つきっかけとなったのが同世代の大西氏の存在だったのだが、そこから当時彼女のトリオのメンバーだったベーシストのロドニー・ウィテカー氏にも目が行き、彼のリーダーアルバム「CHILEDREN OB THE LIGHT」も手に入れ、ベーシストのカッコ良さにも注目するようになった。
そこで、他にもベーシストがリーダーを務めるジャズCDはないものかと探していたある日、ショップでたまたま目にしたのが、マクブライド氏自身の初リーダー作となる「GETTIN' TO IT」(邦題はファースト・ベース)であった。
一般に、ジャズ評論家やジャズファンの多く(特にご年配の方々)は、ジャズを語る場合には往年のプレーヤー達の存在ばかりに目を向け、やれマイルスだのコルトレーンだのといったジャズの巨人をまず知るこそが、王道のジャズの聴き方のように語ってきた。
私自身も当然、入門編としてマイルスやコルトレーンの、古い録音が原典の格安CDなどでまずはそれらを一応聴いたりしたのだが(苦笑)、大西氏の回で述べたとおり、当時の自分と同世代もしくは近い年齢となる、まだ若く、今まさにこれから飛躍しようとしている現役のジャズプレーヤー達の奏でる「今現在のジャズそのもの」を聴きたいという欲求のほうがはるかに強かった。
そういう感覚でジャズに興味を持ち始めたので、大西氏〜マクブライド氏と続く、自分と年齢の近いジャズミュージシャンたちを聴く流れは、その後も一貫して令和となった今の時代にも続いている。
大西順子氏はピアノトリオが活動のメインだったので、個人的にジャズの入門編として聴くには最適であったのだが、やはりトランペットやサックスの音色も好きだった自分としては、当然カルテットやクインテッド、セクステッドなどといったホーン・セクションのあるジャズを聴きたいという流れとなり、そこへドンピシャのタイミングで出会ったのがマクブライド氏の初リーダーアルバムだった。
一体、何がドンピシャだったのか?というと、彼の初リーダー作に名を連ねたゲストメンバーたちが、いずれもその後の米国ジャズ・シーンを背負って立つ若手の逸材揃いだったからだ。
その参加メンバーとは、トランペッターは第1回で取り上げたロイ・ハーグローヴ、テナーサックスはジョシュア・レッドマン、ピアノはサイラス・チェスナットで若手中心、そこにトロンボーンのスティーヴ・トゥーレ、ドラムスはベテランのルイス・ナッシュが加わっていた。
スペシャル・ゲストとしてジャズベーシストの巨匠、レイ・ブラウンとミルト・ヒントンの2人が花を添える曲もあったが、基本は若手メンバー主体のアルバムであった。
この、マクブライド氏のリーダーアルバム入手をきっかけに、個人的なジャズへの興味は更に深まっていき、その後の私の人生において音楽と言えばもうジャズしかない、というくらいのめり込んでいったのである。
初リーダー作のGETTIN' TO IT では、一曲目からノリの良いアップテンポの「IN A HURRY」で始まるのだが、これがまたメンバーそれぞれのアドリブソロがいきなり全開で炸裂する、強烈な印象をもたらすものだ。
マクブライド自身のアルコ・プレイ(弓での演奏)がイントロとなり、キレの良い管楽器が呼応して進行していくのだが、最初のアドリブソロをかますのはジョシュアの豪快なブロウによるテナーサックスで、他のメンバーを鼓舞するかのような名演。
続いてクリスチャンがそのままアルコプレイで普段とは違うベース特有の持ち味を見事に表現。そこへスティーヴの味わい深いトロンボーンが控えめながらも「らしさ」を出していく。
そこからロイによるトランペットのソロとなるのだが、個人的にはこのアドリブソロの最初の数音を聴いただけで、あまりの素晴らしい音色と歯切れの良さにいきなりノックアウトされてしまった。
「何だコイツの音は!凄すぎる・・・」と。
ベーシストがリーダーのジャズを聴こうとして買ったCDで、いきなりゲストトランペッターの音色の魅力に引き込まれてしまったのだった。
その後、ロイ・ハーグローヴ氏のリーダー作品を探し、見つけては買っていくという流れに至ったことは言うまでもない。
もちろん、サックスのジョシュアにもいたく魅了され、彼のリーダー作「ムード・スウィング」をほどなくして購入することになるのだが、そのアルバムで更に、ジャズピアニストとしてのちに盤石の地位を不動のものとする、ブラッド・メルドーという若き天才の男の名を知ることになるのであった・・・。
ということで、次回はジャズサックス奏者のジョシュア・レッドマン氏を取り上げる予定。
今回取り上げるジャズマンは現代の米国ジャズシーンにおいて不動の地位を確立している、ベーシストのクリスチャン・マクブライド氏である。
このシリーズ記事では、本来なら第1回目にジャズピアニストの大西順子氏を取り上げ、その次にこのマクブライド氏の記事を続けるつもりであった。
しかし第1回目の記事で述べた通り、昨年11月に49歳の若さで逝去したジャズトランペッターのロイ・ハーグローヴ氏を急遽取り上げることにしたために、マクブライド氏の紹介は今回となった次第。
私が20代半ば当時に、ジャズに興味を持つきっかけとなったのが同世代の大西氏の存在だったのだが、そこから当時彼女のトリオのメンバーだったベーシストのロドニー・ウィテカー氏にも目が行き、彼のリーダーアルバム「CHILEDREN OB THE LIGHT」も手に入れ、ベーシストのカッコ良さにも注目するようになった。
そこで、他にもベーシストがリーダーを務めるジャズCDはないものかと探していたある日、ショップでたまたま目にしたのが、マクブライド氏自身の初リーダー作となる「GETTIN' TO IT」(邦題はファースト・ベース)であった。
一般に、ジャズ評論家やジャズファンの多く(特にご年配の方々)は、ジャズを語る場合には往年のプレーヤー達の存在ばかりに目を向け、やれマイルスだのコルトレーンだのといったジャズの巨人をまず知るこそが、王道のジャズの聴き方のように語ってきた。
私自身も当然、入門編としてマイルスやコルトレーンの、古い録音が原典の格安CDなどでまずはそれらを一応聴いたりしたのだが(苦笑)、大西氏の回で述べたとおり、当時の自分と同世代もしくは近い年齢となる、まだ若く、今まさにこれから飛躍しようとしている現役のジャズプレーヤー達の奏でる「今現在のジャズそのもの」を聴きたいという欲求のほうがはるかに強かった。
そういう感覚でジャズに興味を持ち始めたので、大西氏〜マクブライド氏と続く、自分と年齢の近いジャズミュージシャンたちを聴く流れは、その後も一貫して令和となった今の時代にも続いている。
大西順子氏はピアノトリオが活動のメインだったので、個人的にジャズの入門編として聴くには最適であったのだが、やはりトランペットやサックスの音色も好きだった自分としては、当然カルテットやクインテッド、セクステッドなどといったホーン・セクションのあるジャズを聴きたいという流れとなり、そこへドンピシャのタイミングで出会ったのがマクブライド氏の初リーダーアルバムだった。
一体、何がドンピシャだったのか?というと、彼の初リーダー作に名を連ねたゲストメンバーたちが、いずれもその後の米国ジャズ・シーンを背負って立つ若手の逸材揃いだったからだ。
その参加メンバーとは、トランペッターは第1回で取り上げたロイ・ハーグローヴ、テナーサックスはジョシュア・レッドマン、ピアノはサイラス・チェスナットで若手中心、そこにトロンボーンのスティーヴ・トゥーレ、ドラムスはベテランのルイス・ナッシュが加わっていた。
スペシャル・ゲストとしてジャズベーシストの巨匠、レイ・ブラウンとミルト・ヒントンの2人が花を添える曲もあったが、基本は若手メンバー主体のアルバムであった。
この、マクブライド氏のリーダーアルバム入手をきっかけに、個人的なジャズへの興味は更に深まっていき、その後の私の人生において音楽と言えばもうジャズしかない、というくらいのめり込んでいったのである。
初リーダー作のGETTIN' TO IT では、一曲目からノリの良いアップテンポの「IN A HURRY」で始まるのだが、これがまたメンバーそれぞれのアドリブソロがいきなり全開で炸裂する、強烈な印象をもたらすものだ。
マクブライド自身のアルコ・プレイ(弓での演奏)がイントロとなり、キレの良い管楽器が呼応して進行していくのだが、最初のアドリブソロをかますのはジョシュアの豪快なブロウによるテナーサックスで、他のメンバーを鼓舞するかのような名演。
続いてクリスチャンがそのままアルコプレイで普段とは違うベース特有の持ち味を見事に表現。そこへスティーヴの味わい深いトロンボーンが控えめながらも「らしさ」を出していく。
そこからロイによるトランペットのソロとなるのだが、個人的にはこのアドリブソロの最初の数音を聴いただけで、あまりの素晴らしい音色と歯切れの良さにいきなりノックアウトされてしまった。
「何だコイツの音は!凄すぎる・・・」と。
ベーシストがリーダーのジャズを聴こうとして買ったCDで、いきなりゲストトランペッターの音色の魅力に引き込まれてしまったのだった。
その後、ロイ・ハーグローヴ氏のリーダー作品を探し、見つけては買っていくという流れに至ったことは言うまでもない。
もちろん、サックスのジョシュアにもいたく魅了され、彼のリーダー作「ムード・スウィング」をほどなくして購入することになるのだが、そのアルバムで更に、ジャズピアニストとしてのちに盤石の地位を不動のものとする、ブラッド・メルドーという若き天才の男の名を知ることになるのであった・・・。
ということで、次回はジャズサックス奏者のジョシュア・レッドマン氏を取り上げる予定。
2019年08月13日
追悼 ディープI&キンカメ
今年の日本ダービー回顧記事以来の、久々の記事となるがまさか、ディープインパクトとキングカメハメハの訃報をこんな短い間に立て続けに聞くことになるとは・・・。
キングカメハメハは種牡馬引退が既に決まっていたが、 ディープインパクトは休養を経て馬体の不具合箇所の手術が問題なく済んでいずれ回復すれば、また馬産地の期待を背負うべく種付けを再開するはずだった、ということなのだが。2頭の冥福を祈る。
当然この2頭とも、並みの種牡馬とは比較にならないほどの種付け数をシーズン中にこなし、その負担の大きさが少なからぬ要因となって死期を早めることになったことは想像に難くない。
思えばアグネスタキオンもマンハッタンカフェも、健在であればまだまだ活躍馬を出し続けそうな状況の中でこの世を去っていってしまい、いずれも追悼記事を載せたが、ディープとキンカメという、一時代を築いたライバル同士の種牡馬がほぼ同時に亡くなってしまうとは、人間の業に縛られて生きるしかないサラブレッドの命運をあまりにも象徴するような出来事に感じてしまう。
この先、2歳戦においてディープ産駒もキンカメ産駒も出て来ない時代が訪れることになるが、個人的には、ディープインパクトの後継種牡馬の中においては最も異系要素に富む血統背景を持つリアルインパクトの産駒たちに、最も期待を寄せて検証をしていきたいと考えている。
なお、今年の日本ダービー馬となったロジャーバローズも脚部の故障により既に競走馬登録を抹消し種牡馬になることが決定しているが、早期の引退をせざるを得なかった故障の原因は、やはり京都新聞杯から中2週でダービー出走となる、「魔のローテーション」が個人的には大きいのではないかと推察している。
2012年の京都新聞杯で勝って中2週で日本ダービーに臨み3着に好走したトーセンホマレボシも、やはりその好走直後に引退を余儀なくされているケースがあるし、それ以前ではNHKマイルCから中2週でダービーに臨んだタニノギムレットやキングカメハメハの早期引退のケースも、言うに及ばずの先例としてあるわけで。
ともあれ、ディープインパクトの死は残念というしかないものの、今後の種牡馬勢力図がどのように推移していくのか、数年先以降の変化を逐次見届けていくしかない。
ここまでの文章でお気付きのことと思うが、このブログ開設以来、文章表現を「です・ます調」でおこなってきたが、今回以降の記事から、「である・だ調」の文章表現で記事を綴ることにした。
記事更新のない間もずっとこのブログを閲覧しに訪れて頂いている読者の方々には、重ね重ね感謝申し上げる次第。
今後の記事更新もしばし、滞るかもしれないのだがいずれまたそのうちに。
キングカメハメハは種牡馬引退が既に決まっていたが、 ディープインパクトは休養を経て馬体の不具合箇所の手術が問題なく済んでいずれ回復すれば、また馬産地の期待を背負うべく種付けを再開するはずだった、ということなのだが。2頭の冥福を祈る。
当然この2頭とも、並みの種牡馬とは比較にならないほどの種付け数をシーズン中にこなし、その負担の大きさが少なからぬ要因となって死期を早めることになったことは想像に難くない。
思えばアグネスタキオンもマンハッタンカフェも、健在であればまだまだ活躍馬を出し続けそうな状況の中でこの世を去っていってしまい、いずれも追悼記事を載せたが、ディープとキンカメという、一時代を築いたライバル同士の種牡馬がほぼ同時に亡くなってしまうとは、人間の業に縛られて生きるしかないサラブレッドの命運をあまりにも象徴するような出来事に感じてしまう。
この先、2歳戦においてディープ産駒もキンカメ産駒も出て来ない時代が訪れることになるが、個人的には、ディープインパクトの後継種牡馬の中においては最も異系要素に富む血統背景を持つリアルインパクトの産駒たちに、最も期待を寄せて検証をしていきたいと考えている。
なお、今年の日本ダービー馬となったロジャーバローズも脚部の故障により既に競走馬登録を抹消し種牡馬になることが決定しているが、早期の引退をせざるを得なかった故障の原因は、やはり京都新聞杯から中2週でダービー出走となる、「魔のローテーション」が個人的には大きいのではないかと推察している。
2012年の京都新聞杯で勝って中2週で日本ダービーに臨み3着に好走したトーセンホマレボシも、やはりその好走直後に引退を余儀なくされているケースがあるし、それ以前ではNHKマイルCから中2週でダービーに臨んだタニノギムレットやキングカメハメハの早期引退のケースも、言うに及ばずの先例としてあるわけで。
ともあれ、ディープインパクトの死は残念というしかないものの、今後の種牡馬勢力図がどのように推移していくのか、数年先以降の変化を逐次見届けていくしかない。
ここまでの文章でお気付きのことと思うが、このブログ開設以来、文章表現を「です・ます調」でおこなってきたが、今回以降の記事から、「である・だ調」の文章表現で記事を綴ることにした。
記事更新のない間もずっとこのブログを閲覧しに訪れて頂いている読者の方々には、重ね重ね感謝申し上げる次第。
今後の記事更新もしばし、滞るかもしれないのだがいずれまたそのうちに。