2009年08月

2009年08月29日

迂回血ラインと凡走パターン

 以前にも触れたことがありますが、迂回血ラインを元に競走馬の血統を分類する方法を用いると、「凡走パターン」となる血統的特徴を持った馬をピックアップすることが可能になります。

 まず、迂回血ライン=ファラリスの直系子孫に活力を与える底力血統ライン、という定義付けが前提としてあるのですが、そのラインとは、母方にファラリスの先祖が迂回した血を持つ種牡馬たちが存在するラインです。

 迂回血ライン種牡馬としては主要な5頭が存在し、ハイペリオン、シックル&ファラモンドの3兄弟にプリンスキロを加えた4頭についてはこれまでに記事として取り上げました。

 最後の1頭はまだ明かしていませんが、これも現代では古めの血脈となっており、ファラリスの直系子孫にとっては異系の扱いができる存在です。ただこの系統ラインが現代馬の血統表上に絡んでいること自体が少ない状況となってきており、あまり影響度が高くないので、あえて名前を伏せています。(サンデーサイレンス自身はこのラインを1つ持っていますが)

 またミスプロ直系の子孫にとっては、シックルは直接の父系先祖にあたるため、複数のシックルのラインを持つ場合でも「迂回血ライン」とはせずに、除外することにしています。(ファラモンドは全弟だが、遺伝子構成は若干異なるはずなのでミスプロ系にとっての迂回血ラインとしている)

 
 ちょっと前置きが長くなりましたが、迂回血ラインとは要するに、底力先祖のラインとして位置づけるのがこの血統理論の特徴です。(ただし対象となるのは全て芝レースに出走する馬のみ)

 実は、3歳の秋までに芝のレースで未勝利を脱出できない馬の多くをランダムに調べてみますと、この迂回血ラインをあまり多く持っていない馬の割合が相当増えることが分かってきています。

 母馬の血統構成を、(母父、母の母父、3代母)のように区分けすると、それぞれのラインでどのように迂回血ライン=底力先祖分布を得ているのか?という特徴が手に取るように分かります。

 一般的に、競走馬の血統理論のほとんどは、「父と母父」の血統をベースとして産駒の能力を解説することが通例となっていますが、私のように「迂回血ライン」をベースとして母馬のポテンシャルの全体像を探ると、父と母父だけでは語れない、「意外な真実」が見えてくるのです。

 最近の、「芝のG1級」の馬たちの多くは、母馬が持つ迂回血ライン数がおおむね10以上あることが示されていることが多く、このブログでも当初からそのことをお伝えしてきました。

 逆の言い方をすれば、母馬の迂回血ラインの継承度合いが少ないと、ファラリスの直系子孫としては台頭しづらい=未勝利に終わる馬や昇級に苦労する馬が多い、ということなのです。

 もちろん、迂回血ライン数が低めでも芝のG1馬になる馬は少数派とはいえども存在します。その場合は大抵、迂回血ライン種牡馬以外の異系ライン、トウルビヨンやザテトラークなどのヘロド系の主張があったり、マンノウォー系などの主張が垣間見えたり、或いはノーザンダンサーなどの大物種牡馬の5代内クロスの近親配合(特に3×4、4×3などの“奇跡の血量”配合)が顕著な場合が必ずあります。

 その事実を応用し、人気サイドとなっている馬の欠点として「迂回血ライン数の少なさ」が顕著な場合、人気でも凡走してしまいがちな馬を見つけることが可能な場合があるのです。

 それが迂回血ラインにおける、「凡走パターン」で、母馬の迂回血ラインの分布を(母父、母の母父、3代母)とした時、その値が(X,0,0)、(X,0,1)、(X,1,0)、(0,X,0)、(1,X,0)、(0,X,1)、(0,0,X)、(1,0,X)、(0,1,X)、となるものです(Xの値は任意)。

 要は2つのラインで0か1しか迂回血ラインの継承がない場合、残り1つのラインでいかに多くの迂回血ライン数があろうと、レースで凡走する確率の非常に高くなる馬、という判断を下すことになります。

 それが人気種牡馬の産駒であろうと、人気サイドの馬であろうと関係なく、ただ、母馬の持つ「迂回血ライン分布」によって示されます。

 例えば本日の新潟第9R、浦佐特別では、ファビラスボーイが1番人気に推されて出走しましたが、非常に惜しい内容とはいえ5着に敗退。

 母ファビラスラフインの持つ迂回血ライン数は僅かに3。その分布はといいますと(3,0,0)というもので、これは正に凡走パターンの母馬なのです。(これはあくまでも“繁殖牝馬”としての特徴であり、現役時代の競走成績を反映するものではありません)

 誤解を避けるために言っておきますと、「凡走パターン」ならば常に凡走する、というものではありません。相手関係に非常に恵まれるか、体調が絶好調&レース展開がバッチリ味方した時などなら、もちろん勝つ場合があります。

 けれども、そういう好走を2戦、3戦と続けていくことが出来ないのが「凡走パターン」の母馬の産駒たちなのです。運良く勝ち上がっても、その後昇級に苦しむ場合が非常に多いのが特徴です。

 芝のレースでは、今後もこの、迂回血ライン的に凡走パターンを持つタイプの好・凡走を随時取り上げます。

 (例として挙げたファビラスボーイに対し、何らの悪意、ネガティヴな感情を持つものでは決してありません。今後凡走パターンを持つタイプとして取り上げる馬についても全てそうであり、あくまでも血統的な特徴から提示するだけのことです)

 私はただの「ギャンブル好き」ではありません。あらゆるサラブレッドたちの走る姿はこの世で一番美しいものだとさえ思っています。そういう馬たちの「血統的な宿命」を探ることへの結果として、「見えてくるもの」がある、とご理解頂けたらと思います。

blood_max at 16:32|PermalinkComments(0) ブログ主旨説明・他