サイアーライン分析

2011年02月03日

リファール系考察(2)

 (1)ではダンシングブレーヴおよびその直仔種牡馬であるホワイトマズル、コマンダーインチーフについて言及しました。

 今回は同じくDブレーヴ直仔のキングヘイローについて。

キングヘイロー(BBLP=10:母方からファラモンド×3+プリンスキロ×2で計5ライン加算)

 母のグッバイヘイローはケンタッキーダービーなどG1戦7勝を挙げた名牝とのことです。この母自身は1985年生まれなので、私が大学生の頃に活躍していた馬ということになりますね。

 その当時は競馬場にも行ったことがなかったし、ましてやレース予想なども全くの未経験でした。それが今や、血統ヲタクな日々を送るただのオッサンと化しております(苦笑)。

 さて、キングヘイロー自身は前出のCインチーフやホワイトMらと異なって日本でデビューし、3歳クラシック路線では皐月賞2着が最高成績。

 ちなみに、この時の皐月賞(1998年)で勝ったのが、

セイウンスカイ(母シスターミルのBBLP=8)

 セイウンスカイの父であるシェリフズスターはハイペリオン直系の種牡馬で、そのBBLP=3(ハイペリオン×3ライン)です。

 つまり、セイウンスカイ自身が持つBBLPは計11ライン(父3+母8)であり、2着に負かしたキングヘイロー、および3着のスペシャルウィーク(BBLP=10)を、たったの1つではありますが、されど1だけ、上回っていたという事実がここに明らかになります。

 また、セイウンスカイの「母の母父」は、リファール直仔のモガミ(BBLP=3)なんですねー。母方にリファール系の血の威力を取り込んで、リファール直系の産駒をやっつけた、というのも面白い要素ですね。

 1998年当時は既に私も競馬ファンとなって5年以上経過していましたが、その当時はまだ現在のような「血統ヲタク」などではなく、ごくごくフツーに競馬予想紙などに頼りまくって、プラス自分の勘などを動員しての平凡な、「場当たり的、その場しのぎ的予想」に終始していました(笑)。

 セイウンスカイは希少なハイペリオン直系子孫として、種牡馬としても後継を残すことが大いに期待されたことでしょうが、残念ながらサンデーサイレンス(系)産駒たちの圧倒的な活躍の前に、良血の繁殖牝馬との配合の機会さえ奪われるような事態も重なって、なす術なく淘汰の洗礼を浴びる形になっていった、と言えそうですね。


 さてキングヘイローに話を戻さねば・・・。

 キングヘイロー自身は古馬になって以降、距離短縮路線に活路を見出し、4歳時にマイルCS2着、スプリンターズS2着などを経て、5歳時にようやく高松宮記念にてG1戦を勝利することとなります。

 キングヘイロ−自身の5代内血統表に目を向けると、サーゲイロード(4×4)の近親クロスに加えて、SGロードの父ターントゥ(5×4・5)、牝馬アルマームード(5×4)、トムフール(5×5:名馬バックパサーの父)、といった多重的なクロス配合に頼っているところが目立ちます。

 このあたりが種牡馬になった場合に産駒への隔世的な遺伝要素として、一体どの近親クロスが優勢に伝達されるのかにおいて不安定さをもたらし、当たり外れが極端に出てムラのある成績につながっているのではないかと推察します。

 キングヘイロー産駒では、やはり距離短縮に活路を見出して結果を出したローレルゲレイロのスプリンターズS勝ち(’09年)が、近年では最も印象に残るものでしょうかねー。

 まあ、当時このブログでローレルゲレイロに絞った事前考察を行い、馬券ゲットが叶ったのが嬉しかったこともありますけども(苦笑)。


 全般的なキングヘイロー産駒の今後についてですが、これだけサンデーS系種牡馬全盛時代の前では台頭していくこと自体が非常に厳しい状況であろうと言わざるを得ないのですが、もう少し大物が出てきてもいいような気はしますね。

 もし、「芝の重賞級」っぽいキングヘイロー産駒が新たに出てきたら、その母のBBLPなども是非チェックしてみたいのですが・・・。

 おっと、今度の小倉大賞典に出るのかな?(てか、もう7歳だけど)

オートドラゴン(母アルパインカーリーのBBLP=9だが・・・)

 母の値が9というのがちと微妙、てな感じも致します。昇級に手間取ったのは長期休養が何度かあったせいもあるでしょうけれども、今回はどういう走りを見せられるのか・・・

 ただし、母自身もノーザンダンサー系であり、オートドラゴンは同系配合馬とみなせます。近2走が不振なので人気サイドになることはないでしょうが、小倉の平坦コースの場合一貫したペースの持続力勝負になりやすく、この配合の特徴が優位に働く可能性がなきにしもあらず・・・かも。

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2011年02月01日

迂回血ライン的・リファール系考察(1)

 あらためまして、新シリーズとなる系統別カテゴリー、「リファール系編」をこちらの記事にてまとめておきます。

 「ファラリスの直系子孫」にとって、「迂回血」を持つ主要な5頭の種牡馬である、シックル・ファラモンド・ハイペリオン・プリンスキロ・ボズワースらに遡ることのできるラインを、「迂回血ライン」と言います。

 「迂回血」とは、上記5頭の種牡馬がそれぞれ、「ダーレーアラビアン〜シリーン(ファラリスの父の父)に至る血の継承における最良のラインを、母方に(迂回させて)持っている」、という事実に由来するものです。
 
 この着眼点により、ファラリス直系の種牡馬(及び繁殖牝馬)にとって「代を経るごとに母方から“迂回血ラインを持つ種牡馬の血”をより多く介入(補充)させることで、根幹父系の遺伝要素を効果的に復元(再構成)するのを容易にし、ひいては系統としての活力の維持・子孫存続のための底力の伝達が可能となる」、という私の仮説が生まれることとなりました。

 迂回血ライン数は、Bypass Blood Line Pointとベタに訳し(苦笑)、略記としてはその頭文字のBBLPで表します。

例:トニービンのBBLP=3(ハイペリオン×3ラインに由来する)


 この独りよがりな?仮説に過ぎない血統考察を、一体どのようにして信憑性を持たせ、1つの説として意義深い確証を得られるのかは、現在繁栄の一途にあるファラリスの直系子孫それぞれにおいて、1つ1つ分析を進めていくほかはありません。

 まずは、日本という地において発展を続けている身近な系統を分析することで、その足がかりの第一歩としていきたいと思います。

 また前置きが長くなりそうなので(苦笑)、早速以下に。


ノーザンダンサー(BBLP=2:ハイペリオン+シックル)

→ リファール(BBLP=2:補充なし)

 *リファール自身は、何を隠そう、Phalarisを父系とする両親を持つことによる、「同系配合馬」です。ファラリス直仔Pharosの流れをくむネアルコ系の父と、ファラリス直仔Fairwayの流れをくむフェアトライアル系の母を持つのが、リファールの配合のかなめでしょう。

 ファロス、フェアウェイは全兄弟(その母はScapa Flow)であり、リファール自身はこの全兄弟クロスを(4×4)の近親配合で得ていることになります。

 リファール自身の一流マイラーとしての競走実績(仏G1ジャックルマロワ賞など)は、同系配合馬であることに加え、その全兄弟クロスが奏功していることによるものであろう、と個人的には推察します。

 ではその、マイラー型の父から、何ゆえに中距離型(2400m前後で活躍するタイプ)の後継種牡馬が現れるのか?

 既存の血統理論では、「母方から、スタミナを内包する種牡馬の血などを継承しているからだろう」という程度の考察で済ませて、それ以上の議論にもっていくことはないし、それ以外の「何か」を用いて議論しようとはしないのが常、です。

 私の場合、単純明快に「迂回血ラインを補強しているからである」と答えることができるし、逆に、「迂回血ラインを(多めに)補強できていないファラリス直系の種牡馬は、早晩衰退傾向に陥り、後継子孫を残すことが極めて難しい状況になる」、という仮説を提示することが可能です。

 また、「代を経るごとに、距離適性が伸びる」という、様々なファラリス直系の各系統における現象は、おそらく十中八九、迂回血ラインの補強の有無が関わっている、と私は考えています。

 それを端的に示しているのが、リファール直仔ダンシングブレーヴ(BBLP=5)と、その後継種牡馬である主要な3頭でしょう。

 実は、凱旋門賞馬のダンシングブレーヴが持つ5つの迂回血ラインの内の1つは、上記「主要5頭の種牡馬」ではないラインからの継承です。これについては、TARGETをお持ちの方は各自、血統検索にて確認してみて下さい。

 非常にマイナーな血脈ではあるのですが、迂回血を持っているという部分では等しく重要な存在であるものとして、そのラインを加算対象としています。あえてこの記事ではその種牡馬の名前を挙げません。挙げたとしても「ほとんどみんな知らない名前」のはずなので・・・。


ダンシングブレーヴ(BBLP=5:母方からプリンスキロ+ファラモンド+マイナー迂回血の計3ライン加算))

→ コマンダーインチーフ(BBLP=6:母方からシックルの1ライン加算)

→ ホワイトマズル(BBLP=11:母方からハイペリオン×4+ボズワース+プリンスキロの計6ライン加算)

 全くの同年(1990年)に生まれた2頭のDブレーヴ産駒。いずれも競走馬としては超一流であったと言えるでしょう。Cインチーフは英ダービー・愛ダービー両方を制覇。

 ホワイトMは伊ダービーをレコード勝ち、古馬相手のKジョージ&Qエリザベスでオペラハウスの2着、凱旋門賞ではアーバンシーの2着。

 伝統と格式ある英・愛ダービーを制したCインチーフのほうが、競走実績としては当然上、とみるのが筋でしょう。

 では、共に日本に種牡馬として輸入され、父として成し得た実績のほうはどうか?

 Cインチーフは全般的にダートの大物が多く、芝においては初期の産駒アインブライド(阪神3歳牝馬S:現・阪神JF勝ち)や、ラスカルスズカ(天皇賞・春2着)、イブキガバメント(京都記念2着)などを輩出。

 それに対し、迂回血ラインを充分すぎるほど補強していたホワイトMのほうは、天皇賞・春勝ちのイングランディーレ、オークス馬スマイルトゥモロー、菊花賞馬アサクサキングスなどを輩出。

 種牡馬としてはどちらも成功した、ということがもちろん言えますが、やはり究極のところ(芝のG1戦連対クラス)における産駒の活躍度は、誰がどう見ても、ホワイトMのほうが確実に上だろう、と言うはずですね。これに関しての異論はないはずです。


 同年に生まれた2頭のダンシングブレーヴ直仔が種牡馬となったとき、彼らに対して迂回血ラインによる血統考察手法を用いれば、自ずと、「迂回血ライン」が意味するもの=血統ポテンシャルの真実、が見えてくると言えるでしょう。

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2011年01月30日

春はりふぁーる。やうやう馬券になりゆくごーる前・・・。

 このたび、某競馬雑誌「サ*ブレ」に倣って(パクって?)、「迂回血ライン的・系統インストール」と致しましての、新シリーズの記事を立ち上げます。(現在、停滞中・・・)

 まずは手始めに、ノーザンダンサー系(略記:Nzn−D系)の中から、「リファール系」を焦点に当ててその後継種牡馬たちを、「迂回血ライン」にて検証しておこうと思います。

 基本的な受け止め方として、ネアルコ直仔の3大血脈(ナスルーラ・ロイヤルチャージャー・ニアークティック)の内、後発的な存在であるニアークティック直仔ノーザンダンサーの系統が、現代において世界で最も繁栄を極めているという事実を重く見る必要があろうかと思います。

 当初、爆発的に繁栄を始めたのはナスルーラの系統のほうでした。アガ・カーン3世が種牡馬としてのナスルーラに見切りをつけ、他人に売却したことで歴史は動いていきますが、紆余曲折を経てアメリカに渡ったナスルーラは種牡馬として大成功を収めます。

 特に直仔の4大父系、ボールドルーラー、グレイソヴリン、ネヴァーベンド、レッドゴッドの系統が更に飛躍を遂げました。日本においてはプリンスリーギフト系が成功を収めましたが、これだけは欧州であまり重要視されない系統であったことから、比較的容易に日本へ輸入することが可能だったことが背景にあるとされています。

 それらのナスルーラ系が、いち早く「ネアルコ直系子孫」としてのサイアーラインの確立を成し遂げたと言えるのですが、あまりに急速に発展しすぎたきらいがあり、早々と飽和状態に近いものが状況として生まれていました。

 そこに、1960年代後半あたりを境にして、後発ノーザンダンサーの系統が世界中の競馬を席巻していったわけです。

 ノーザンダンサーは、「ネアルコの孫」という言い方ができるのですが、私が「迂回血ライン」の研究を始めて気が付いた重要な事とは、ナスルーラ直仔やロイヤルチャージャー直仔で後継種牡馬となった、「ネアルコの孫」となる立場をグループとして見た場合、「迂回血ライン数:BBLP=2」という値を持っているのは、「ノーザンダンサーしか居ない」という事実です。

 もっとも、この事実は私がTARGETという便利な競馬データベースソフトの「血統検索機能」を利用して得られた結果に基づいているので、ジェネラルスタッドブックなどの正式な資料を元に言っているのではないことをお断りしておきます。

 少なくとも、私が調べることのできる範囲内において、「ネアルコの孫」という立場で迂回血ライン数を2つの値で持っている(ハイペリオン&シックルの2頭に由来する)のは、ノーザンダンサーだけです。

 この他の「ネアルコの孫」となる種牡馬では、ナスルーラ直仔のレッドゴッドのみが1つ持っている(由来はファラモンド)だけにとどまります。

 ノーザンダンサーが、「基点」となって繁栄を極めていく過程の中で、この迂回血ライン数の初期値=2が、他のネアルコ直系子孫に対しての非常に大きなアドバンテージとなっていったと、私自身は解釈しています。

 他の血統理論がどうであろうと、私は私なりの解釈で、私自身が構築した仮説(ファラリスの直系子孫が繁栄するためには、代々母方から主要な迂回血ライン=ハイペリオン・シックル・ファラモンド・プリンスキロ・ボズワースのラインを、その時代に相応な数で得ること)に基づき、「競走馬が真に繁栄するための血統的力学」を検証していきます。

 そういった前提の下に、これから随時、「ファラリスの直系子孫=後継種牡馬群」を検証していく、ということですね。

 前置きが長くなりましたが(苦笑)、その手始めとして選ぶのがノーザンダンサー直仔のリファールから分岐した系統となります。血統予想家のM・M氏が、かなり以前から、「春はリファールの血を持つ馬が激走する」という持論を競馬雑誌などで展開されているので、そこにリンクさせて取り上げてみよう、という意図もありますね・・・。

 では、早速。

ノーザンダンサー(2)→リファール(2)

 面白いことに、リファールというのは母方から迂回血ライン種牡馬の介入がありません。というわけで、ノーザンダンサーの持つBBLP=2の値が、そのまま受け継がれているというタイプとなります。

 実は、「ファラリスの存在が1世代でも遠くなるごとに、母方から迂回血ライン種牡馬の血を補強をすることがベストである」、という解釈に立ちますと、リファール自身については余り評価できず、「父ノーザンダンサーの威光」で何とか次世代に後を託した、というものになります。

 この関係性への解釈は、現代においてはチーフズクラウン(7)→チーフベアハート(7)の親子関係がそのまま当てはまります。

 チーフベアハートはマイネルキッツなどを出すことに成功していますが、個人的な解釈では、CBハートは母方から迂回血ラインの補強が一切ないため、「パパであるチーフズCの威光」で産駒を勝たせている、という解釈をするわけです。

 これは、一代で会社を築いた初代社長が、(経営者としてはダメな)息子に後を譲ったものの、何とか後ろで「院政を敷く」ことで会社経営を維持している、という感じでしょうか(苦笑)・・・。

 話をリファール系に戻します。

 リファール自身はジャックルマロワ賞などを勝ったマイラーでしたが、では、何故にリファール直仔種牡馬は中距離以上でも成功を収めたのか? 

リファール(2)→ダンシングブレーヴ(5)

リファール(2)→アルザオ(6)

 この、毎度お馴染みの2つの分岐系統の初期における流れを見れば、いかに迂回血ライン種牡馬の存在(補強)が重要であるかが、お分かりいただけると存じます。

 ダンシングブレーヴ自身の実績は「欧州の至宝」とまで言われ、種牡馬としても当然期待されましたが、マリー病という不治の病に冒され、欧州は彼に期待するのを止めたことで、日本の競馬界が輸入できる状況となりました。

 もしマリー病でなかったら、どんな大金をはたいたとしても、日本がこの素晴らしい血を導入することは不可能であった、とも言われていますね・・・。

 一方、アルザオの場合は後継種牡馬を残せませんでしたが、優秀な牝馬の父となることで、ディープインパクトの偉業達成などにも絶大な貢献をしたことは言うまでもありません。

 とりあえず今回はここまで。

 この続きは、なるべく間隔を空けずに記事をUPさせます。それ以外の全てのネアルコ直系、およびネイティヴダンサー直系についても、順次カテゴリーを設けて、いずれ系統別の記事として残すつもりです。

 ご期待されているかどうか分かりませんが(苦笑)、どうか長い目で見守ってやってくださいまし・・・。 

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2010年10月21日

芝のRサイアー争い(その2)

 昨日の記事はなんだか、「ブログ主旨説明」となってしまいましたが、最近読者になられた方々を一応、意識したものです。

 迂回血ラインとは何ぞや?をまず説明した上で、キングカメハメハの血統背景に迫っていきますと、そもそも「ミスプロ系の種牡馬たち」という存在自体が、「ファラリス直仔、シックルの後継サイアーライン」なんですね。

 ここで、考察に困るポイントが浮上してきます。

 ファラリスの直系子孫にとって、迂回血ライン種牡馬(主な5頭)の存在が底力系の要素となり、母方から代々補強されることが非常に重要な意味を持つのですが、困ったことに、

 「シックルの直系子孫にとって、シックル経由のラインを母方から代々多く補強することで果たして底力要因となっているのかどうか?」

 の解釈の難しさです。

 そもそもの父系先祖=シックルであるキングカメハメハが、父系以外のラインからシックルの血を多数補強することは、度の強い近親配合とはまた違った意味で、「同一祖先の血の重複が過剰となることによる活力の欠如」という面も考慮しないといけないのではないか?と考えるからです。

 実際、ミスプロ系の種牡馬で例を挙げると、

エンドスウィープのBBLP=5(旧解釈では8)

ヘクタープロテクターのBBLP=5(旧解釈では8)

ウォーエンブレムのBBLP=7(旧解釈では10)


 ウォーEの父、Our Emblemは、ダマスカスとトムロルフという種牡馬の血を内包していますが、そのダマスカスもトムロルフも、シックル経由のラインを1つずつ持っています。

 エンドスウィープとヘクターPも、やはり母方にはシックル経由のラインが2つ存在していて、旧解釈では父系を含めたシックルの存在をそのまま迂回血ラインとしていました。そして、

キングカメハメハのBBLP=11(旧解釈では17)

 キンカメが、父系を含め計6つのシックル経由のラインを持っていることが分かるのですが、ネアルコの直系子孫にとって「ネアルコ経由のラインを多く持ち過ぎることによる弊害」を懸念材料としている以上、同じ考察の条件を、シックル直系子孫にも当てはめるべきだろうということで、新解釈でミスプロ系種牡馬と繁殖牝馬のBBLPを算出(つまりシックルのラインは除外)することとし、現在に至っています。


 ・・・とまあ、父系先祖シックルのラインを全て除外しても、キングカメハメハの持つBBLP=11となるのですが、マンハッタンカフェの持つBBLP=11と全くの同数であるということが、私にはとても「単なる偶然」とは思えません。

 元を辿れば同じファラリスの直系子孫だが、片やシックル〜ネイティヴダンサー経由のキングカメハメハと、ネアルコを経由してのマンハッタンカフェが、共に迂回血ライン数を「計11」の値で補強している・・・。

 今年もキンカメの「芝ランキング」でのリーディングサイアー独走は続きそうですが、来年以降の血統勢力図はまたガラリ一変となるのか、ディープインパクト(BBLP=12)の産駒たちなどの動向も、カギを握っていくでしょうね。 


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2010年10月20日

今年もボチボチ考察 芝のRサイアー争い(その1)

 このブログでは昨年も、秋以降のG1戦が続く中で“芝限定の”リーディングサイアー争いの行方について何度か記事にしましたが、今年もキンカメの独走に対しマンハッタンカフェがなんとか追いすがる、という図式は変わっていませんね。

 先週もキンカメ産駒アパパネが賞金をガッポリ稼いだかと思いきや、府中牝馬SでMカフェ産駒が負けじと2頭でのワンツーでした。

 いつもは出走馬たちの「母馬のBBLP」を中心に血統を考察していますが、今日は芝のサイアー争いの1、2位をキープし続けるこの2頭についてクロースアップしてみます。

父系はミスプロを経由し、ファラリスに遡るキングカメハメハのBBLP=11

父系はネアルコを経由し、ファラリスに遡るマンハッタンカフェのBBLP=11


 迂回血ライン数=Bypass Blood Line Point とは、迂回血を持つ種牡馬として特に重要な5頭(シックル、ファラモンド、ハイペリオンの3兄弟と、プリンスキロ、ボズワース)の先祖たちに遡るラインを、「のべ数」としていくつ持っているか、を示すものです。

 上記5頭のうち、シックルとファラモンドの全兄弟は、ファラリス直仔の種牡馬で、シックルはネイティヴダンサー〜ミスプロ系へと続くサイアーラインの祖となり、ファラモンドのほうはバックパサーへと至るサイアーラインの祖となりました。

 ハイペリオンとプリンスキロについては、特に血統を学ぶ者にとってはまず知っておかなければならない絶対的な存在なので、ここでは多くを述べないでおきます。

 ボズワースという種牡馬は知らない方のほうが多いでしょうが、数世代経たエルバジェ〜シーホークのラインから、アイネスフウジンとウィナーズサークルという2頭が二年連続で日本ダービーを制した、と言えば、ああそいつらの先祖か、と思う方はおられるはずですね。

 エルバジェの名前がTARGETの血統表で検索できるケース自体がかなり減ってきているという事実はありますが、いずれも、「底力の伝達」というキーワードで語ることができるのが、上記5頭の「主要な迂回血ライン種牡馬」なのです。

 なぜ、この上記5頭が現代の馬たちにとって、母方に入ると特に「底力」となってきたのか?

 しかもよくよく見れば、「ファラリスの直系子孫たち」ばかりでの競馬が繰り広げられている現代において・・・。

 上記5頭の種牡馬の、「母方の血」を見れば、そのいずれもがダーレーアラビアン〜シリーンというサイアーラインの流れを持っていることが分かります。

 現代競馬の中興の祖、ファラリスにとって、「父の父」にあたるのが、シリーンという種牡馬です。

 つまり、ハイペリオンやプリンスキロが、母方にシリーンという種牡馬の血を持つということは、その存在が「ファラリスの直系子孫たち」にとってみれば、「自分自身の父系根幹ラインの遺伝要素が、それら異系種牡馬の中に迂回させた状態の位置から補強できる」、ということですね。

 だから、月並みな命名のしかたかもしれませんが、私は「迂回血ライン」と呼ぶことにしたのです。

 「自分の父系由来の遺伝子」をハイペリオンやプリンスキロが持っていてくれることで、近親配合に過度に頼るようなことを避けつつ、ファラリスの直系子孫たちはそれらの血を「多めに」得ることで芝の重賞級としての活躍度を「上げて」いきます。


 眠くなってきたので続きは明日に。

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