2011年09月

2011年09月30日

2歳馬の血統 分析(21)

10/1 中山5R 2歳新馬(芝1600m)

アルティメイトラブ(母コイウタのBBLP=14だが・・・)

 母コイウタはG1ヴィクトリアマイルを12番人気で勝利したという経歴の持ち主。母馬となりその産駒も注目されるでしょうが、今回の配合相手はシンボリクリスエスで、最近ヤケに多くなっている「シンボリK×母父サンデーS(系)」ということで同系配合馬として扱う事例に。

 最近の繁殖牝馬はノーザンダンサーの血脈をコテコテに持つようなタイプが多いですが、コイウタの場合はドクターデヴィアス経由で1つのラインを持つのみで、しかも世代位置としてはアルティメイトラブにとって6代前。その影響力はかなり控えめと思われます。

 迂回血ラインを主として考察するタイプからは外れますが、どういう成長曲線を描いていけるかに一応興味を向けておきたいと思います。


 同じレースに出走予定の、

コスモグランデール(母Exhibit OneのBBLP=8)

 この母はかなり古めの血脈を多く持つ牝馬で、ネアルコ経由のラインは計7つ程度しか持ちませんが、その血量は14%を超える値で影響力としてはかなりのウエイトを占めます。

 「またその話かい?」と思う方々も多いでしょうが(苦笑)、今や希少価値といえるキングマンボの直仔ではあっても、そう上手い具合にいくもんかいなー?という目線で私自身はこの産駒を見つめることにします・・・。


10/1 阪神5R 2歳新馬(芝1600m)

ダノンオリエント(母ヴァンドノワールのBBLP=10)

 半姉にフラワーC、秋華賞を勝ったブラックエンブレムが居ますが、この姉は父も母父もミスプロ系となる同系配合馬であり、かつミスプロ(3×4)の黄金配合を持つタイプなので考察に際しては複合的な見方が必要でした。

 けれどもハーツクライが父となることでダノンオリエント自身は5代アウトブリードの配合となり、母自身のBBLPの効果のほどがストレートに反映しやすいタイプではないかと推察します。

 ノーザンダンサーの血脈にコテコテに頼らなくても強い産駒は出ますよ〜と、ハーツクライが笑って?示せるのならいいのですが・・・。


ディープブリランテ(母ラヴアンドバブルズのBBLP=11)

 全姉のハブルバブルは話題先行のみで結果が伴わない事態になりつつあるものの、弟の行く末にはやはり注視が必要かと思われます。

 個人的には、母L&バブルズとステイゴールドとの配合の「妙」を見てみたいものです。母自身は異系トウルビヨンの直仔Djebelの血を6代前に計4ライン持っていますので、おそらく「異系アシスト」が発動しやすい配合になるものと推察できます。

 世の中は母父メジロマックイーンとの「効果効用」ばかりに目が向いているようですが、ドクターデヴィアスの血を持つ繁殖牝馬などでも、おそらくステイGとの配合で成功確率が上がるはずです・・・。


ポップアイコン(母ピンクタートルのBBLP=2:(2,0,0)の凡走パターン)

 この母はオークス馬のレディパステルを産んでいますが、レディパステルの父はトニービンであり、ピンクタートルの父はブラッシンググルームなので共にナスルーラ直系の両親を持つことによる「同系配合馬」の扱いが出来、特殊な効果効用があったと思われます。

 実際、レディパステル以外の仔らはみな、成功しているとは言い難い状況にありますので。

 父がダイワメジャーに替わることで果たしてどうか?というところですが、現時点でのダイワメジャー産駒の成功事例には「ノーザンダンサー(系)のクロス」がかなり優位に機能しているように思えます。

 ポップアイコンの場合、母自身はノーザンダンサー血脈を一切持たないタイプになるので、ダイワメジャーの「真価」というものは、こういう牝馬との配合でこそ試されるのです。

 もし、BBLPの値からしても「現代の母馬」としてはかなり低く、かつ凡走パターンのタイプに属してしまうピンクタートルが相手でも産駒が「芝重賞級」になっていくのだとすれば、その時は最高の賛辞の言葉でもってダイワメジャーの種牡馬としてのポテンシャルを称えたいと思います・・・。


ラルシュドール(母レクレドールのBBLP=7だが・・・)

 母自身はステイゴールドの全妹、というわけでおそらくこの馬も話題先行となるでしょう。けれども配合相手の種牡馬がまたまたシンボリクリスエスでは、同系配合馬の扱いをせざるをえず・・・。

 シンボリクリスエス自身の血統背景に異系トウルビヨンのラインが複数存在するのであれば、当然逆パターンでの「異系アシスト」の顕現が期待されるのですが、そのラインは1つも存在しません。

 むしろ別の異系であるマンノウォーのラインのほうがSクリスエスには複数で存在しており、レクレドール(マンノウォーの血量は2%未満)との配合では異系アシスト効果は出ないでしょうね・・・。

 両親がヘイルトゥリーズン系ということでの、同系配合の要素でどの程度やれるか?という感じですね、ラルシュドールのようなケースでは。


blood_max at 00:27|PermalinkComments(2) 2歳馬 考察 

2011年09月26日

神戸新聞杯 回顧

 まあ、回顧するまでもないとは思いますが(苦笑)、ガチガチでしたね・・・。

 一応、感想めいたものは残しておこうと思います。個人的にはショウナンマイティに期待したものの、ダメならダメでしょうがないな、程度の位置付けでの◎でした。

 近年、夏の上がり馬の勢いというものが本番の菊花賞に直結する傾向にありますが、今年に限っては3冠馬誕生の確率がかなり高そうで、久々に「本当に強い菊花賞馬」という印象をオルフェーヴルが身をもって示してくれるのだろうと思っています。

 そもそも、近年の菊花賞は「ダービー馬不在」で施行される状況が続いていたわけです。

2007年ダービー馬 ウオッカ:もとより菊花賞に出るはずもなく・・・。

2008年ダービー馬 ディープスカイ:天皇賞・秋に出走し菊花賞には目もくれず・・・

2009年ダービー馬 ロジユニヴァース:不良馬場での激走によるダメージが秋以降も抜けず・・・。

2010年ダービー馬 エイシンフラッシュ:神戸新聞杯2着後に脚部不安により回避・・・。


 というわけで、「そりゃー、上がり馬の台頭する余地も生まれるわな」というのが正直なところでした。

 もう一つ深い意味で言えば、ダービー馬不在ならダービー2着馬が菊花賞へ参戦すれば勝つのか?というと、こりゃまたそう上手くいく状況にはならないわけで・・・。

 2007年以降のダービー2着馬においては、アサクサキングスしか菊花賞を勝てていない、わけですし。

 今回、どれだけオルフェーヴルとの実力差を詰められるのか?という目線が集中していたウインバリアシオンに対しても、おそらく多くのファン及びプロ予想家が、「この差(2馬身1/2)は決定的だな」と感じたことと思います。

 距離が伸びればまた様相が変わる、とか、今回はまだ仕上がり途上、とかでウインバリアシオンの菊花賞制覇を期待する声も少なからずあるにしても、倒す相手は3冠を目指す立ち位置にいるダービー馬。

 今回勝てずして、いつ勝てるのか?という印象しか残りませんでしたね。道中はほぼ同じ位置取りでオルフェーヴルをウインバリアシオンがマークする形。

 4コーナーではほぼ5番手と同じような位置取りで直線に向かい、超スロー(千m通過時63秒5)の展開なら直線の上がり勝負は必至、の状況。

 それで差を詰めるどころか、ダービーの直線同様、突き放されてしまうという決着。

 もし、ウインヴァリアシオンが菊花賞で勝つシーンがあるとしたら、ダービーの時のようなどしゃ降りの不良馬場になってパワーを要求される状況か、或いは良馬場なら自分から行って道中2、3番手あたりで追走し、早めのマクリで後続の脚を使わせる展開に持ち込み、オルフェーヴルの追撃を封じる、・・・というイメージでしょうか。

 父ハーツクライが有馬記念で先行策に出てディープインパクトを封じたような、ああいう競馬のイメージですね。

 もしそれが出来るのならば、3冠達成を阻止するだけの意義と価値は大いにあると思います。菊花賞で今回と同じような、単にオルフェーヴルをマークして後ろから追従していくだけの競馬なら、3冠阻止は絶対に不可能だと思われます。

 3冠達成も久々に見たいところですし、その3冠を阻止出来るだけのポテンシャルを発揮する馬が菊花賞で登場した場合、それはそれで大いに価値のあることだと私は思っています・・・。

 なお、今回いいところがなかったショウナンマイティに関してですが、再度浜中騎手に手綱が戻るのであればもう一度菊花賞でも狙ってみたい、と私は思います。

 今回どういう経緯で武豊騎手になったのか定かでない(おそらく馬主の意向だろうが)ものの、浜中騎手が菊花賞ではショウナンマイティに騎乗できるといいのですが(もう、武豊に依頼すればなんとかなる・・・時代ではないと思うのだが)。   

blood_max at 00:23|PermalinkComments(2) 3歳馬 考察 

2011年09月24日

神戸新聞杯 考察

 1つ前の記事でも述べていますが、個人的には神戸新聞杯が菊花賞のトライアルというよりも、ここで能力を発揮するほうが菊花賞で勝つことよりはよほど重要なのではないかなと考えています。

 ただ今年の場合は2冠馬のオルフェーヴルが3冠目の奪取を目指しますので、当然ながら菊花賞を勝つことは重要であり、大きな称号となることは確かです。

 ですがそうではない例年のケースでは、3歳春の次点でクラシックに間に合わなかった面々が上がり馬として菊花賞を勝つことがあっても、それが古馬になって以降の「G1級」の活躍にほとんどつながっていない、という傾向があまりにも顕著過ぎます(オウケンブルースリは頑張ったほうだが、それでも物足りない印象)。

 3歳秋というのは馬体の完成における重要な時期で、もちろん個体差があって早熟傾向とか晩成傾向とかの違いで完成度には個々のズレがあって当然でしょうが、やはりこの時期の3000mG1戦、というのは過酷といって然るべきでしょう。

 これにJRAがG1開催ということでの「集客力UPへの一環」として、過度なまでの高速馬場を演出して意図的にレコードタイムが出るような状況を作り出すというのが、2007年あたりでは本当にミエミエでした。

 その最大の被害者となったのがソングオブウインドです。古馬以降の活躍を見せるまでに至らず、高速馬場での激走が馬体に過剰なまでの負荷をかけ、故障〜引退に追い込まれました。

 さすがに2010年あたりになって、そういう馬場作りはマズい、というJRA上層部の反省があったのか(苦笑)、過度な芝の刈り込みによる高速馬場の演出はやや控え気味になってきているような気はしますが・・・。


 さて今週の阪神芝コースの状態は「芝刈りの実施」を控えており、同じ野芝100%の中山では芝刈りを実施し、阪神より数センチ短い状況にしていることが確認できます。実際、阪神の芝は時計が出にくい状況が先週から続いています(Bコースへの変更ということでの違いは出てくるでしょうが)。

 3歳馬の重賞での故障はマズいが、古馬中心の重賞ならば従来どおりの高速馬場で、ということでしょうかね。唯一の3歳馬マイネルラクリマ(母ティアドロップスのBBLP=12)の激走に、少々期待しているのですが・・・。

 
1.ステラロッサ(母レッドキャットのBBLP=6)

 先週のローズSでは、ハーツクライ産駒の上がり馬キョウワジャンヌが見事に3着に入り込み、秋華賞出走権を手にしましたが、あれだけの超スローでは条件上がりの馬には好都合の「格の差が出ないレース展開」とも言え、仕上げに遅れが目立ったマルセリーナやエリンコートにも当然不向きの状況でした(にしても負け過ぎの感はありますが)。

 今回のステラロッサに関しても、時計が掛かる馬場状態で超スローの展開なら、ある程度上位進出は可能かな?と思えるのは確かです。ただ、個人的にこの馬が将来、「芝重賞級」の活躍馬となりそうな気配は感じられないですね。


2.トリノ(ヘイロー3×4の黄金配合クロスを持つ)

 こういう、ダート勝ち上がりの馬が芝実績もないまま芝重賞を使うことに、私自身は違和感を禁じえません。論評するに値しない、と考えます。もちろん、「出れるものなら出てみよう」、という馬主の思惑は分からなくはないですが、そうであっても芝実績というものを実感してから、というのが筋というものでしょう。


3.スマートロビン(リファール4×2の近親クロスを持つ)

 母のキーブギー自身はノーザンダンサー(2×3)という、超絶な形態での近親クロスを持ちます。こういうWのケースでは迂回血ラインの出る幕全くなし、ですな(苦笑)。

 こういう近親配合で強くなれるのならそれでよいですが、子々孫々に好影響の配合になり得るとは、とても思えませんね。あくまでもスマートロビンが「自己完結型」の競走馬としてどう完成していくのかを見ておきたい、という程度です。


4.イグアス(母ポトリザリスのBBLP=4)

 この母が産んだディアデラノビア、マゼランなどに対する印象が「良い」ものとして残っている人たちにとっては、イグアスは魅力的な弟に見えるのかもしれません。

 私自身の評価基準では、ポトリザリスは「現代の母馬」としては既にもう役不足で、「芝重賞級」の仔を出せる状況としてはかなり厳しいものがある、と推察しています。

 配合相手のディープインパクトがポトリザリスの「3倍」の値でのBBLPを持つゆえに、大幅に母の欠点をカバーするケースとなり得るのは当然想定されますが、にしても、未勝利脱出までの経緯を見る限りでは、いきなりG2の芝重賞で勝ち負けというのは想定しにくいものがありますね・・・。


5.ウインバリアシオン(母スーパーバレリーナのBBLP=11だが・・・)

 今ひとつ、力量を測りかねる感じの馬です(苦笑)。不良馬場でのダービー2着にケチを付けるのもどうかとは思いますが、どうもねえ・・・。

 もう一つ引っかかるのが弥生賞で7着という不甲斐なさ。陣営からすれば春当時は「ツメの不安があって歩様も良くなかった」とのことで、夏を越して「今はツメの不安も解消している」とのこと。

 過去20年ほどの「ダービー2着馬」を見てみても、3歳の2月〜3月のトライアル期間に、こういう不甲斐ない負け方をしていた馬はほとんどいないので、「ツメのせい」だけならばいいのですが・・・。

 母自身はノーザンダンサー(2×4)という、黄金配合の要素を通り越した形態での強い近親クロスを持ちますし、Wバリアシオン自身はノーザンダンサー(5×3・5)というクロス形態でこれは血量だけで言えば18.75%となり、あくまでも数値の上では「黄金配合と同じ」というタイプになります。

 そのクロス効果の程度はどうあれ、どのみちWバリアシオンは「コテコテにノーザンダンサーの血脈に頼りまくること」でしか、強さを発揮できないタイプなんでしょうね・・・。


6.ショウナンマイティ(母ラグジャリーのBBLP=9だが・・・)

 この馬自身はAlleged(4×3)の、通常のクロス形態での黄金配合を持っています。これもまた読みにくい部分で(苦笑)、なんとなく力量はあると感じるにしても安定感を欠くという印象。

 けれども父Mカフェがもうしばらくの間は「芝部門」でのリーディングサイアー争いで上位の位置に居続けるでしょうから、父の勢いは素直に評価しておきたいところ。今回は好走できる土壌が整っているとみますが。浜中騎手が名残り惜しそうに調教をつけていた、らしいですしね・・・。


7.オルフェーヴル(母オリエンタルアートのBBLP=8(3Tt,3,2T)だが異系アシスト有り)

 説明しましょう。迂回血ライン3分割表示におけるTの字は、異系トウルビヨンの頭文字を示し、小文字のtはその血脈が「トリプル」で存在することを示すものです。

 先週のセントライト記念で、同じ見た目「ステイG×母父Mマックイーン」のフェイトフルウォーが勝利を飾ったため、ますます巷では「見た目評価」のみが横行していきそうですが。

 オルフェーヴル自身にはノーザンテースト(4×3)の黄金配合によるクロス効果も絶大のようなので、迂回血ラインでの評価は関係ねーというか、無視していいでしょうね(苦笑)。

 ですが異なる要素であってもその効果で3冠目を目指す以上は、今後の競馬界を牽引していくためにも是非とも頑張ってほしいところです。


9.カーマイン(母スカーレットレディのBBLP=8)

 ヴァーミリアンを産んでいる母ですが、あくまでもダート実績です。芝実績においては偉大なる一族にしてはやや物足りない印象がありますね。おそらくこのカーマインも、芝重賞での連戦連対というのはまずなさそうに思えます。たまに、メンバー的に狙えるような状況が今後もあるでしょうけれども・・・。


10.ナムラオウドウ

 同系配合の要素で、どこまでやれるかな?という程度ですね。重馬場や時計のかかる洋芝優位の馬場、或いは野芝でも平坦コースで平均ラップが速い、一貫した持続力を問われるケースなどであれば、今後もある程度のレベルで走れそうですが・・・。


11.フレールジャック

 この馬自身がヘイロー(3×4)の黄金配合による近親クロスを持ちます。デビューが遅くなってしまったことについてはどうしようもなく、このまま「連対街道」を続けていけるのかどうか?というところですね。

 今回の2強に最も迫れそうな勢いを感じるのは確かですが、クラスが上がっての「ヘイローの持つ狂気」的な気性面の危うさが出ないかどうか、そこは気掛かりでもあります。

 気性難ではなく、類い稀な勝負根性として顕現しさえすればこの上ない「武器」であることは、同じ黄金配合を持つヴィクトワールピサが証明しているので、とにかくその部分の奏功次第、という馬です。


12.ダノンミル(母スターリーロマンスのBBLP=6)

 母はフジキセキの全妹で、当然BBLPの値も同じく6となります。フジキセキの良さは異系配合の要素が濃い、という部分であり、多種多様な血脈の牝馬との和合性に富むことが大いなる利点となってきました。

 BBLPの値の低さでは他のサンデーS系種牡馬に大きく劣り、それがマイル以下の距離中心に活躍馬を多く出すという傾向にも直結しています。

 このフジキセキの特徴を「繁殖牝馬」としてどう活かすのかが興味の向かうところ。当然、配合相手の種牡馬との和合性が良さそうなのは確かで、BBLP=10以上の値を持つ種牡馬が相手であればSロマンス自身の6という低めの値はさほど気にしなくていいのかな、とは感じています。

 ただ、せっかく若葉Sで見せたパフォーマンスが皐月賞では全く出なかったことは残念で、その意味では父ジャンポケの気性的にムラな傾向というものも出やすいのかも?という懸念はありますね。

 2400mがベストとは思えませんが、3歳馬同士の今の時期であれば気にする距離ではないと思います。 

blood_max at 13:32|PermalinkComments(2) 3歳馬 考察 

2011年09月23日

神戸新聞杯 考察の前に・・・。

 近年の神戸新聞杯を振り返っておきます。

2007年

1着 ドリームジャーニー(母オリエンタルアートのBBLP=8:(3Tt,3,2T)でトウルビヨンの異系アシスト有り)

2着 アサクサキングス(母クルーピアスターのBBLP=8)

3着 ヴィクトリー(母グレースアドマイヤのBBLP=7)


2008年

1着 ディープスカイ(母アビのBBLP=11)

2着 ブラックシェル(母オイスターチケットのBBLP=11だが・・・)

3着 オウケンブルースリ(母シルバージョイのBBLP=6)


2009年

1着 イコピコ(母ガンダーラプソディのBBLP=8)

2着 リーチザクラウン(母クラウンピースのBBLP=5)

3着 セイウンワンダー(母セイウンクノイチのBBLP=6だが・・・)


2010年

1着 ローズキングダム(母ローズバドのBBLP=10)

2着 エイシンフラッシュ(母ムーンレディのBBLP=8だが・・・)

3着 ビッグウィーク(母タニノジャドールのBBLP=6だが・・・)


 あくまで、近年で馬券になった3頭のみにおける相関関係を提示していますが、この4年間だけを見ましても母のBBLPの値で低いほうの勝ち馬がいない、ということが分かると思います・・・。

 2006年夏にTARGETを用いて本格的に血統研究に着手して以降、迂回血ラインの概念に基づく血統解釈においてはまだ明確に定まらない事例が多々ありましたし、そういう紆余曲折を経て5年ほどが経過しようとしています。

 難しい部分としてはやはり、産駒自身が強い近親クロス(4代以内)を持つタイプや、母馬自身が同系配合馬、または強い近親クロスを持つ場合での柔軟な視点が要求されることが分かってきた、ということですね。

 それと、「現代の主流血統として強い」ことを示すレースとして、果たして「菊花賞」という長距離G1戦の舞台が現代においてそれに最も相応しい様相を呈しているのか?ということへの考察も、個人的には重要だと感じています。

 これについては多くの見解があると思います。もちろん歴史と伝統ある3歳クラシックレースの3冠目でもありますし、競馬の格言においても「最も強い馬が勝つ」と位置づけられてきたのがこの菊花賞です。

 ですが、こと近年の傾向に関して言えば、菊花賞馬たちのその後の経緯を見るにつけても上記の格言どおりの印象を、菊花賞馬に対して持つことができるでしょうか?

 このあたりは、馬券を獲ったとか獲らないとかの話とは別次元の問題であり、「単に的中できれば菊花賞馬がその後どうなろうと、どうでもいい」という人がもしおられるとすれば、そもそも私の見解とは相容れないというか、話が噛み合わずにすれ違うだけの問題になってしまいます。

 菊花賞馬が本当に強いかどうかが分かるのは、当然古馬以降でもG1戦をどんどん勝ち負けするだけの能力を見せ続けた場合でしょう。

 ですが近年は、ソングオブウインドなどをきっかけに早期に故障・引退(或いは古馬以降に低迷が続く)などとなる様相が顕著になってきています。レース施行時期を早めたことに加え、常に当該週を高速馬場に作りすぎるのがその傾向に拍車をかけた、と私自身は感じます・・・。


 このブログにおいては、ディープスカイの登場したあたりから、「ファラリスの直系」が強い子孫を残し続けるための「基準」が、種牡馬のBBLP=10以上か、繁殖牝馬のBBLP=10以上を持つことが「傾向として顕著になってきたようだ」と推察し、それを「芝重賞級の仔を産む」十分条件として捉え、考察を続けてきました。

 2009年のイコピコ◎的中をこのブログで披露できたことに関しては、私自身もいまだに忘れることのない出来事となっていますが、この年は特殊事例として受け止めています。

 まず、極悪の馬場となったダービーで激走したロジユニヴァース(母アコースティクスのBBLP=12)が夏を越しても立ち直れず、神戸新聞杯で不出走だったこと、そして春の皐月賞上位組の面々が、いずれも「母のBBLPでイコピコを上回る値を持たない」ことが分かっていたからです。

アンライバルド(母バレークイーンのBBLP=4(3,1,0)の凡走パターン)

トライアンフマーチ(母キョウエイマーチのBBLP=5:(5,0,0)の凡走パターン)

 「凡走パターン」については過去記事にて何度も説明を試みてきたものですが、重賞を勝ち負けしたような馬に対してもそういう評価をすることに、いまだに違和感を覚える読者のかたもおられることと思います。

 私は「凡走パターンの母を持つ」産駒たちの傾向に、かなりの明確なメッセージ性(もちろん血統背景・配合構成における)があると感じ、ことあるごとに対象となる母を持つ馬たちを提示してきました。

 最近の傾向で顕著だったのがリベルタス(母カーリングのBBLP=3:(3,0,0)の凡走パターン)ではなかったかな、と思います。スプリングSで2番人気に支持されながら、13着と敗退。

 明確な故障などの敗因がなかった上での出来事であり、この結果には私自身が大きな衝撃を受けました。なにせリベルタスはそれまでの5戦で、全て馬券になっていた馬ですし、「このまま強くなるのなら、凡走パターンの追求なんてもう止めようか」と考えていたほどだったたからです。

 リベルタスの復活があればそれはもちろん喜ぶべきことですし、ぜひそういう経過になっていけるよう願っています。

 この話のつながりで、古馬重賞オールカマーに出走予定の、

カリバーン(母リーチマイハーバーのBBLP=7:(6,0,1)の凡走パターン)

 この馬は人気サイドでも常に安定した成績を残してきており、1番人気での出走が計7回中5勝で、2着が1度と4着が1度あるだけです。

 これまでは条件戦における経緯であり、問題の克服はOP馬となったここからです。幸い、父デュランダルのBBLP=11で、これは母方にノーザンダンサー経由のラインがあるサンデーS系種牡馬としてはダンスインザダークと同じ値となり、母自身の底力不足に関しては十分に補完できるはずの値ですね。

 ただ、気性面に関してはダンスと同じ懸念材料の「アルマームードのクロス」をデュランダル自身も持ちますので、エリンコートのようなムラ駆け馬が出るとしても、全く想定内の事象でもあります。

 そのあたりの経過がどうなっていくか、カリバーンの今後の動向にも注視していきたいと思います・・・。
 

blood_max at 20:50|PermalinkComments(0) 3歳馬 考察 

2011年09月18日

2歳馬の血統 分析(20)

9/19 阪神5R 2歳新馬(芝1800m)

3.エタンダール(母ミスペンバリーのBBLP=12だが・・・)

 全兄にクリサンセマムがいるものの戦績は(1−0−0−4)で、近走も2度2番人気に支持されつつ5着が2回とやや不振。この母の欠点としては、やはりネアルコ血脈の過多(計13ライン)があることでしょう。

 ローズSではメデタシが出走していましたが9着。一時期はチューリップ賞3着と好結果が出ていた馬ですが、このメデタシの母オジャッタモンセについても、当時からネアルコ血脈の過多(計13ライン)が懸念材料、と明言してきました。

 2歳早期〜3歳前半の時期までにおいては、どういう血統の欠点があろうと、あまり表に出てこないことが往々にしてあるものなのですが、それは当然、周囲にいる対戦馬(素質馬)たちが常に全能力を発揮できているわけではないからであり、単に厩舎同士の仕上げ方における程度の違いや、超スローで展開しがちなレースレベル(正しいポテンシャル判定に直結しにくい)などに「助けられている」という側面があるからですね。

 「血統を診断する」ことの真意は、その馬の「本質」を事前に見抜くことにこそあり、仮にチューリップ賞でのメデタシの3着が当てられなかったとしても、本質の評価というものはブレないのです。

 それじゃあ、ケースバイケースでのタイムリーな馬券なんて獲れないぢゃないか!と思っているそこのアナタ・・・。

 そういう方々は血統なんぞに興味を持つことよりも、その時その時の馬券獲得に必要な情報(もちろん血統以外のファクター)というものを最重要視されるのがよろしかろうと思います。

 私の場合、チューリップ賞でメデタシを狙わずに馬券では失敗したとしても、元々の血統解釈の方が正しかったと判断できる時期がいずれ来る、ということのほうが重要です。

 結局は、多種多様な血統背景の2歳馬たちを見ていく上での、「的を射た血統判定のあり方」の基礎につながっていくからですね。それがまわり回って、実は「不人気馬の激走」を見抜く機会を増やしていく、という・・・。


6.モンテエクリプス(母ケイウーマンのBBLP=10)

 この馬の場合、半兄にモンテクリスエスなどがおり誰の目にも分かりやすいタイプなので、今後とも大敗などがない限り人気サイドの馬として推移していくことと思います。

 父がシンボリクリスエス(BBLP=8)からディープインパクト(BBLP=12)に替わることの有利さは、別に迂回血ラインなんていう尺度が存在しないにしても皆、分かっていることでもあり、面白みはないですが(苦笑)。

 迂回血ラインは、単に現役時代の競走実績というものだけで「種牡馬のポテンシャル」を判定しようとするものとは異なり、あくまでも種牡馬になった場合には一様に、「ファラリスの直系子孫」としての迂回血ライン継承度はどの程度なのか?ということが種牡馬ポテンシャル判定の大前提となります。

 新種牡馬である、ダイワメジャー(BBLP=8)とアドマイヤムーン(BBLP=12)の両産駒の活躍の行方が大いに気になるところですが、登場回数の多いダイワメジャー産駒たちがどうしても目立ち気味な中、出走頭数は少なくても馬券になるアドマイヤムーン産駒たちは、質において上回る内容を成果として出せれば迂回血ラインの考察手法の意義も大いにアリ、ということになると自負しています・・・。


8.オリオンザパワー(母サマニタイヨーのBBLP=4:(4,0,0)の凡走パターン

 よくある「見た目配合」の父キンカメ×母父サンデーSとなる1頭。ですがそういう見た目の判断のみが全く通じないケースとなりそうなのが、こういう母馬のタイプです。

 この母はサンデーS以外の血脈からは一切の迂回血ラインの継承がなく、当然それはクラスが上がっていく場合の底力継承度の少なさとして顕現していきます。

 父キンカメが怒涛の勢いで産駒の勝利を量産させているので、この母の欠点を大いにカバーすることもなくはないのですが、それでどこまで昇級していけるか?というところですね・・・。

 一応、牝系としてはシラオキ〜フロリースカップへと遡る在来牝系となりますので、その要素が野芝しか存在しなかった時代からの特質を継承している面においては、今の時期の阪神開催の芝状態を味方にできなくはないかな、というフォローもしておきたいとは思いますが。


12.リュウシンアクシス(母ラグレスロマニーのBBLP=15だが・・・)

 母父スペシャルウィークのBBLP=10が存在としては大きく、少々買いかぶりは禁物かな?と思いたい母馬ではあるのですが、母自身の配合では欠点らしい欠点もなさそうで、とりあえず注目ですね。

 管理する橋口師ご自身が北海道のセレクションセールで馬体の良さに惚れ込んで購入に至ったほどの逸材、とのフレコミがマスコミを賑わせているようです。

 父のファンタスティックライトに関しては、一時期そのBBLP=12(父ラーイのBBLP=5+母父ニジンスキーのBBLP=3+三代母kamarのBBLP=4)として注目に値するかどうかの経緯がありました。

 けれども現3歳産駒たちの不振ぶりは目を覆うばかりで、おそらくは、ファンタスティクライト自身が既にネアルコ三大血脈の始祖3頭を近い世代で内包することから受ける影響力の大きさが、「活力の大幅な低減」というカタチになって具現化してしまっているからではないか?という推察を今はせざるをえない事態になっています。

 そういう父の事情を、配合相手の母ラグレスロマニーが払拭できるかどうか・・・。

 母が持つ迂回血ライン、計15の継承がもし大いに役に立つのだとしたら、私にとっても興味深い存在となります、リュウシンアクシスという馬は。 


blood_max at 22:03|PermalinkComments(4) 2歳馬 考察